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犬のお腹の超音波検査、何がわかるの?

Posted on 2026年4月28日

腹腔内主要臓器の超音波解剖学と評価ポイント

犬の腹部超音波検査では、腹腔内の主要な臓器を一つ一つ系統的に評価し、その形態、サイズ、内部エコーパターン、辺縁、そして周囲組織との関係を詳細に観察します。正常な超音波解剖学を熟知していることが、異常を正確に識別するための出発点となります。

肝臓:実質、脈管、胆嚢の包括的評価

肝臓は犬の腹腔内で最大の臓器であり、多くの機能を担っているため、超音波検査において非常に重要な評価対象です。

肝臓の形態とサイズ:
肝臓は通常、肋骨弓の内側に収まっており、その辺縁は鋭利で滑らかです。肥大している場合は、辺縁が鈍化したり、肋骨弓を超えて腹腔内に突出したりすることがあります。
肝臓のサイズは、相対的に脾臓や腎臓、胃との比較、あるいは個体の体格を考慮して判断します。
実質エコーパターン:
正常な肝臓の実質は、比較的均一な中等度エコーで描出されます。これは、腎臓の皮質よりは高エコーで、脾臓の実質よりは低エコーであるという相対的な関係性が特徴です(「肝臓は脾臓より暗く、腎臓の皮質より明るい」と表現されることが多いです)。
疾患によっては、実質エ全体のエコー輝度が上昇(脂肪肝、リンパ腫、肝炎の慢性期など)または低下(うっ血肝、急性肝炎など)したり、局所的な高エコー(結節性過形成、一部の腫瘍、膿瘍)、低エコー(腫瘍、嚢胞、壊死巣)の病変が観察されます。
肝臓の血管構造(門脈、肝静脈、肝動脈)は、内部に血流があるため無エコーの管腔構造として描出されます。門脈は壁が比較的厚く、肝内胆管は門脈に沿って走行しますが、正常では通常識別困難です。肝静脈は壁が薄く、後大静脈に合流します。
胆嚢と胆管系:
胆嚢: 肝臓の腹側、左葉と右内側葉の間に位置し、内部に胆汁を満たした無エコーの梨状の構造として観察されます。胆嚢壁は薄く滑らかで、厚さは通常1-2mm以下です。
評価ポイント: 胆嚢の大きさ(過度に拡張しているか)、壁の厚さ、内部の内容物(胆泥、胆石、粘液嚢腫、腫瘤性病変など)。胆泥は重力依存性に沈殿する微細な粒子状エコーとして観察され、粘液嚢腫は特徴的な星状またはキウイフルーツ状のパターンを示すことがあります。
胆管: 肝内胆管は正常では識別困難ですが、閉塞などにより拡張すると「木の枝状」または「平行線状」の管腔構造として描出されます。総胆管は十二指腸乳頭部に開口し、正常径は犬種や体格によりますが、一般的に2-4mm程度です。拡張している場合は閉塞の可能性を疑います。
検出可能な主な疾患: 肝炎(急性、慢性)、肝腫瘍(原発性、転移性)、結節性過形成、肝膿瘍、脂肪肝、胆泥症、胆嚢粘液嚢腫、胆石症、胆管炎、門脈シャント、うっ血肝など。

脾臓:サイズ、エコーパターン、辺縁の緻密な観察

脾臓はリンパ系の臓器で、腹腔の左前方に位置し、胃の左側、左腎臓の腹側に接しています。

脾臓の形態とサイズ:
正常な脾臓は、細長く、滑らかな辺縁を持ち、肝臓の実質よりも高エコーで均一なエコーパターンを示します。
サイズは非常に変動しやすく、麻酔や鎮静によって拡張することがあります。一般的に、厚さや幅、長さで評価し、体格と比較して判断します。
実質エコーパターン:
実質は均一な中等度高エコーで、肝臓と比較して明るく見えます。
疾患によっては、脾臓全体が腫大(脾腫)し、エコーパターンが不均一になったり(リンパ腫、炎症)、低エコー結節(リンパ腫、血腫)、高エコー結節(結節性過形成、一部の腫瘍)、無エコーの嚢胞性病変などが観察されることがあります。
検出可能な主な疾患: 脾腫(全身性疾患の二次的変化)、結節性過形成、血腫、血管肉腫、リンパ腫、骨髄異形成症候群、トルーブルート症候群など。脾臓は腫瘍性疾患が多く発生するため、わずかな結節も見逃さないよう注意深い観察が必要です。

腎臓:皮質、髄質、腎盂、血管系の精密検査

腎臓は左右に一つずつ存在し、背側腹膜腔に位置します。左腎は脾臓と胃の左側に、右腎は肝臓のすぐ尾側に接しています。

腎臓の形態とサイズ:
腎臓は楕円形またはソラマメ型をしており、滑らかな辺縁を持ちます。左右の腎臓のサイズに大きな差がないかを確認します。犬種や年齢によってサイズは異なりますが、一般的に長軸はL2椎体の2.5-3.5倍程度が正常範囲とされています。
実質エコーパターン:
腎臓は、外側の皮質 (Cortex) と内側の髄質 (Medulla)、そして中心部の腎盂 (Renal Pelvis) に分かれます。
皮質: 均一な中等度エコーで、肝臓の実質よりも低エコー、脾臓よりはさらに低エコーで描出されます。
髄質: 皮質よりも低エコー、または無エコーの錐体状構造として描出されます。乳頭部が腎盂に突出しています。
皮質髄質境界: 正常では明瞭に区別できます。
腎盂: 尿を集める部分で、通常は無エコーの線状構造として僅かに認められる程度です。拡張している場合は水腎症や腎盂炎を疑います。
血管系: 腎動脈、腎静脈はドプラモードで血流を確認できます。
検出可能な主な疾患: 腎不全(急性、慢性)、腎盂腎炎、水腎症、腎結石(尿路結石)、腎嚢胞、腎腫瘍(原発性、転移性)、慢性腎疾患に伴う皮質線維化、副腎皮質機能亢進症に伴う腎石灰化など。

消化管:胃、小腸、大腸の壁構造と機能の解析

消化管は超音波検査において最も評価が難しい臓器の一つですが、その層構造や蠕動運動、内容物の評価は診断上非常に重要です。

胃:
食道と十二指腸を結ぶ臓器で、通常は食物やガス、液体を含んでいます。胃壁の厚さ、特に幽門部の評価が重要です。
評価ポイント: 壁の厚さ(拡張状態によって変動)、層構造の維持、内容物(異物、腫瘤、液体、ガス)、幽門部の病変。
検出可能な主な疾患: 胃炎、胃潰瘍、胃内異物、胃拡張捻転症候群(GDV)、胃腫瘍(腺癌、リンパ腫)、幽門狭窄症など。
小腸:
十二指腸、空腸、回腸から構成されます。最も重要な評価ポイントは、小腸壁の層構造と厚さ、そして蠕動運動です。
小腸壁の層構造: 正常な小腸壁は、内側から外側へ向かって、粘膜 (Mucosa)(高エコー)、粘膜下層 (Submucosa)(低エコー)、筋層 (Muscularis)(高エコー)、漿膜 (Serosa)(低エコー)の5層構造として描出されます。ただし、一般的には3層または5層として認識されることが多いです。
評価ポイント: 壁の厚さ(特に特定の部位の限局性肥厚)、層構造の乱れや消失、内容物の性状(液体、ガス、異物)、蠕動運動の有無と程度、周囲のメセンテリーリンパ節の評価。腸管の直径も重要で、閉塞を疑う場合は腸管の拡張を評価します。
検出可能な主な疾患: 炎症性腸疾患(IBD)、腸リンパ腫、腸内異物、腸重積、腸閉塞、出血性胃腸炎、消化管運動機能障害など。
大腸:
盲腸、結腸、直腸から構成されます。ガスが多いため、超音波での評価は小腸よりも困難なことが多いです。
評価ポイント: 壁の厚さ、層構造、内容物。
検出可能な主な疾患: 大腸炎、腫瘍、便秘、巨大結腸症など。

膵臓:形態、エコーレベル、周囲組織との複雑な関係

膵臓は、十二指腸に沿って走行する細長い臓器で、解剖学的に左葉、右葉、体部から構成されます。非常に小さく、周囲組織(脂肪、消化管ガス)に隠されやすいため、観察が難しい臓器の一つです。

膵臓の形態とサイズ:
正常な膵臓は、薄く細長い形状をしており、周囲の脂肪組織と同等かやや高エコーで均一に描出されます。
左葉は胃と脾臓の間に、右葉は十二指腸の彎曲に沿って存在します。
評価ポイント: 膵臓自体のサイズ(腫大の有無)、辺縁の明瞭さ、実質のエコー輝度と均一性、膵管の拡張。
周囲組織との関係:
膵臓周囲の脂肪組織のエコー輝度の上昇や液体の貯留(腹水)は、膵炎の重要な兆候です。
検出可能な主な疾患: 膵炎(急性、慢性)、膵腫瘍(インスリノーマ、腺癌など)、膵嚢胞、膵膿瘍。特に急性膵炎では、膵臓の腫大、低エコー化、周囲脂肪組織の高エコー化、腹水の貯留などが特徴的な所見です。

膀胱・尿道:壁の厚さ、内容物、周囲リンパ節の評価

膀胱は、骨盤腔内の恥骨のすぐ頭側に位置する、尿を貯留する器官です。

膀胱の形態とサイズ:
尿の貯留量によってサイズや形状が大きく変化します。内部は無エコーで描出されます。
評価ポイント: 膀胱壁の厚さ(正常では1-2mm程度)、壁の不均一な肥厚、内腔の内容物(尿結石、膀胱炎による沈殿物、腫瘤、凝血塊など)。結石は強い音響陰影を伴う高エコー構造として明確に描出されます。
尿道: 膀胱頸部から尾側に伸びる尿道は、特に雄犬の場合、前立腺を貫通します。
評価ポイント: 尿道の開存性、壁の厚さ、内部の結石や腫瘤の有無。
周囲リンパ節: 膀胱周囲の内腸骨リンパ節なども評価の対象となることがあります。
検出可能な主な疾患: 膀胱炎、尿路結石、膀胱腫瘍(移行上皮癌が最も多い)、神経因性膀胱、膀胱破裂など。

生殖器:子宮、卵巣、前立腺、精巣の病態把握

生殖器の超音波検査は、繁殖管理や生殖器関連疾患の診断に不可欠です。

雌犬の生殖器:
子宮: 未避妊の雌犬で発情周期の特定の時期や妊娠時、あるいは病的な状態(子宮蓄膿症など)でなければ、正常な子宮は通常、腹部超音波検査では識別困難か、非常に細い管腔構造としてしか見えません。
評価ポイント: 子宮角の直径(拡張の有無)、壁の層構造、内腔の内容物(液体貯留、胎仔、腫瘤)。子宮蓄膿症では、特徴的な液体貯留と壁の肥厚が観察されます。
卵巣: 正常な卵巣は非常に小さく、腎臓の尾側、脾臓のすぐ内側に位置しますが、観察は困難です。
評価ポイント: 卵巣のサイズ、形態、内部の嚢胞や腫瘤の有無。
検出可能な主な疾患: 子宮蓄膿症、子宮内膜炎、子宮腫瘍、妊娠診断、胎仔評価、卵巣嚢胞、卵巣腫瘍など。
雄犬の生殖器:
前立腺: 雄犬の膀胱のすぐ尾側、尿道を取り囲むように位置します。年齢とともに生理的に肥大します。
評価ポイント: 前立腺のサイズ(犬種や年齢と比較)、対称性、実質のエコーパターン(均一性、嚢胞、膿瘍、腫瘤の有無)、尿道との関係。
検出可能な主な疾患: 前立腺肥大症(BPH)、前立腺炎、前立腺膿瘍、前立腺嚢胞、前立腺腫瘍(腺癌が主)。
精巣: 陰嚢内に位置するため、通常はリニアプローブを用いて評価します。
評価ポイント: 精巣のサイズ、形態、実質のエコーパターン(均一性、腫瘤の有無)、精巣上体。
検出可能な主な疾患: 精巣炎、精巣腫瘍(セルトリ細胞腫、セミノーマ、間細胞腫)、停留睾丸、精液瘤など。

副腎:形態とエコーパターン、位置関係からの病変検出

副腎は左右の腎臓の頭側に位置する小さな内分泌器官で、正常な状態では観察が非常に難しい臓器です。

副腎の形態とサイズ:
左右の副腎は、それぞれ腎臓の頭側内側に位置し、細長い楕円形またはピーナッツのような形状をしています。
犬種や体格によってサイズは異なりますが、一般的に最大径は7mm以下とされています(大型犬でこれよりやや大きくても正常範囲内となる場合があります)。特に小型犬では3-4mm程度が正常範囲です。
評価ポイント: サイズ、形状、辺縁の滑らかさ、実質のエコーパターン(正常では均一な中等度エコー)、周囲組織との関係(特に後大静脈との位置関係)。
検出可能な主な疾患: 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)に伴う副腎の腫大や腫瘍(腺腫、腺癌)、副腎皮質機能低下症(アジソン病)に伴う副腎の萎縮、褐色細胞腫(副腎髄質由来の腫瘍)。副腎腫瘍は、サイズが大きくなると周囲組織への浸潤や後大静脈内への腫瘍塞栓形成が見られることがあります。

リンパ節:サイズ、形態、内部構造、門の精査

腹腔内には多くのリンパ節が存在しますが、超音波検査で日常的に評価されるのは、メセンテリーリンパ節(腸間膜リンパ節)、内腸骨リンパ節、肝門リンパ節などです。

リンパ節の形態とサイズ:
正常なリンパ節は、小さく、楕円形または細長い形状をしており、実質は均一な低エコーで、中心部に高エコーの「門 (Hilum)」と呼ばれる構造が認められます。
評価ポイント: サイズ(正常では通常1cm以下)、形状(円形化しているか)、辺縁の明瞭さ、実質のエコーパターン(均一性、低エコー化、無エコー化、壊死巣の有無)、門の構造の有無と明瞭さ。
検出可能な主な疾患: リンパ腫(最も多い)、反応性リンパ節炎(炎症性疾患に伴う)、転移性腫瘍。リンパ腫の場合、リンパ節は著しく腫大し、円形化し、実質は均一な低エコーまたは無エコーとなり、門の構造が消失することが特徴的です。

これらの臓器の評価は、個々の臓器単独で行われるだけでなく、腹腔内全体として臓器間の相互作用や位置関係、血管構造、腹水貯留の有無なども含めて包括的に行われます。この詳細な評価こそが、超音波検査が提供できる診断情報の深さを示すものとなります。

超音波検査で検出可能な主な疾患とその特徴

超音波検査は、腹腔内の多様な疾患の診断に極めて有効です。ここでは、超音波で検出される主な病態とその画像所見の特徴について解説します。

腫瘍性疾患:悪性か良性か、画像からの鑑別アプローチ

腹腔内臓器に発生する腫瘍は、犬において非常に一般的な疾患です。超音波検査は、腫瘍の存在、位置、サイズ、形態、周囲組織への浸潤の有無、そして血管分布に関する情報を提供します。良性腫瘍と悪性腫瘍を画像のみで確実に鑑別することは困難ですが、いくつかの所見は鑑別の手助けとなります。

肝臓腫瘍:
所見: 肝臓実質内に孤立性または多発性の結節性病変として描出されます。エコー輝度は低エコー、等エコー、高エコーと様々で、内部に嚢胞性変性や出血を伴うこともあります。悪性腫瘍(肝細胞癌、胆管癌、転移性腫瘍など)では、辺縁が不整であったり、周囲組織への浸潤を示唆する所見が見られたり、血管新生が豊富な場合はカラードプラで血流信号が強く検出されることがあります。良性腫瘍(結節性過形成、腺腫など)は、比較的辺縁が整っており、内部エコーパターンも均一であることが多いですが、大型化すると鑑別が難しくなります。
脾臓腫瘍:
所見: 脾臓内に単発または多発性の腫瘤として描出されます。非常に多様なエコーパターンを示すため、鑑別が難しいことがあります。血管肉腫は、しばしば不整な辺縁を持ち、内部に液体成分(血液)を含む不均一なエコーパターンを示すことがあります。血腫と血管肉腫は画像所見が類似することが多く、鑑別には生検が不可欠です。リンパ腫は、脾臓全体が腫大し、実質が低エコー化または不均一になることがあります。
腎臓腫瘍:
所見: 腎臓の形態を歪めるような、あるいは限局性の結節として描出されます。腎細胞癌は、不整な辺縁を持ち、内部に嚢胞や出血、壊死を伴う不均一なエコーパターンを示すことがあります。リンパ腫は腎臓がびまん性に腫大し、皮質が低エコー化することがあります。
消化管腫瘍:
所見: 消化管壁の限局性肥厚や、層構造の乱れ・消失として描出されます。リンパ腫は、壁全体が肥厚し、特に筋層の低エコー化が特徴的です。腺癌は、壁の限局性・非対称性肥厚、潰瘍形成、周囲への浸潤を示すことがあります。壁の肥厚が3-5mmを超える場合、腫瘍の可能性が高まります。
膵臓腫瘍:
所見: 膵臓内に低エコー性の結節や腫瘤として描出されます。インスリノーマは比較的小さく、発見が困難なこともありますが、腺癌は大型化し、周囲組織への浸潤やリンパ節転移を伴うことがあります。
膀胱腫瘍:
所見: 膀胱壁の不均一な肥厚、内腔への突出、特に膀胱三角部に好発します。移行上皮癌は、特徴的な不整な壁肥厚と、内腔へのカリフラワー状の突出を示すことがあります。時に音響陰影を伴わない沈殿物や凝血塊と鑑別が難しい場合があります。
リンパ節腫瘍 (リンパ腫、転移性腫瘍):
所見: リンパ節が著しく腫大し、円形化し、正常な高エコーの門構造が消失し、実質が均一な低エコーまたは無エコーとなることが特徴的です。腹腔内の複数のリンパ節が同時に腫大していることも多いです。

腫瘍の診断において、超音波検査は「ここが怪しい」というターゲットを絞り込むのに優れていますが、良悪性の確定診断や組織型の決定には、超音波ガイド下でのFNA(針吸引生検)や組織生検が不可欠です。

炎症性疾患:臓器ごとの特徴的な超音波所見

炎症は、様々な臓器で超音波画像に特徴的な変化を引き起こします。

肝炎 (Hepatitis):
所見: 急性肝炎では、肝臓の腫大、実質エコーの低下(低エコー化)が見られることがあります。慢性肝炎では、肝臓のサイズが正常から萎縮傾向を示し、実質エコーが不均一または高エコー化し、線維化を示唆する所見が見られることがあります。胆嚢壁の肥厚や胆泥の増加も伴うことがあります。
膵炎 (Pancreatitis):
所見: 急性膵炎の最も特徴的な所見は、膵臓の腫大、低エコー化、周囲脂肪組織の高エコー化、そして腹水(無エコー)の貯留です。特に膵臓周囲のメセンテリーの高エコー化は重要な兆候です。慢性膵炎では、膵臓の実質が不均一になり、石灰化や嚢胞形成が見られることがあります。
炎症性腸疾患 (Inflammatory Bowel Disease; IBD):
所見: 小腸壁のびまん性または限局性肥厚、特に筋層と粘膜層の肥厚が特徴的です。層構造の乱れや消失、腸管の蠕動運動の低下も見られることがあります。消化管周囲のリンパ節の反応性腫大を伴うこともあります。
腎盂腎炎 (Pyelonephritis):
所見: 腎盂の拡張(水腎症)、腎盂内腔への沈殿物やガスの貯留、腎臓の実質エコーパターンの不均一化、腎臓の腫大などが見られます。場合によっては、腎臓周囲の炎症性変化も観察されます。
膀胱炎 (Cystitis):
所見: 膀胱壁のびまん性または限局性肥厚、内腔への沈殿物(泥状エコー)の貯留、血餅の形成などが見られます。細菌性膀胱炎ではガス産生菌により膀胱壁にガスエコーが見られることもあります。
子宮蓄膿症 (Pyometra):
所見: 子宮角の著しい拡張と、内部に均一または不均一な液体(膿)の貯留が見られます。子宮壁は肥厚し、層構造の乱れを伴うことがあります。重症例では、腹水や腹膜炎の兆候が見られることもあります。

形態異常・構造異常:先天性および後天性の病態

超音波検査は、先天性の奇形や後天性の構造的な異常を特定する上でも非常に有効です。

門脈体循環シャント (Portosystemic Shunt; PSS):
所見: 肝臓内の門脈系から体循環静脈系(後大静脈など)に異常な血管が繋がり、門脈血が肝臓をバイパスして直接体循環に入る病態です。超音波検査では、異常なシャント血管の同定が最も重要な所見です。肝臓が萎縮していること、腎臓が拡大していること、膀胱内に結石(尿酸アンモニウム結石)が見られることなども二次的な所見として重要です。ドプラモードでシャント血管内の異常な血流を評価できます。
胆嚢粘液嚢腫 (Gallbladder Mucocele):
所見: 胆嚢内に濃縮された粘液状の物質が貯留し、特徴的な「キウイフルーツ様」または「星状」のエコーパターンを示します。胆嚢壁の肥厚を伴うこともあります。重症化すると胆嚢破裂や胆管閉塞を引き起こす可能性があります。
水腎症 (Hydronephrosis):
所見: 尿管閉塞などにより尿の流出が妨げられ、腎盂が拡張して尿が貯留する状態です。超音波検査では、腎盂の著しい拡張と、それに伴う皮質・髄質の菲薄化が観察されます。重度な水腎症では、腎臓全体が液体で満たされた嚢胞状の構造となることがあります。
腸重積 (Intussusception):
所見: 腸の一部がその遠位の腸管腔に陥入し、望遠鏡のように重なり合う病態です。特徴的な「ターゲットサイン」または「ドーナツサイン」と呼ばれる同心円状の層構造が超音波で描出されます。これは、陥入した腸管の壁が多層に重なり合って見えるためです。

液体貯留:腹水、膿瘍、嚢胞の鑑別診断

腹腔内の異常な液体貯留は、超音波検査で容易に検出され、その性状や分布から原因を推測する手がかりとなります。

腹水 (Ascites):
所見: 腹腔内に自由な液体(無エコー)が貯留している状態です。少量であれば臓器間や臓器の周りに薄く分布する程度ですが、多量になると臓器が浮遊して見えます。液体のエコー輝度(無エコー、低エコー、内部にエコー源を含むなど)は、原因(漏出液、滲出液、血液、胆汁、尿など)を鑑別する手がかりとなります。例えば、変性した炎症細胞やフィブリンを含む滲出液は、内部に浮遊する微細なエコー源として描出されることがあります。
膿瘍 (Abscess):
所見: 内部に膿が貯留した、限局性の液体貯留性病変です。内部は不均一な液体エコー(低エコーから高エコーまで多様)で、ガスやデブリを含むことがあります。周囲は炎症によって肥厚した壁に囲まれていることが多いです。超音波ガイド下での穿刺吸引により、確定診断と治療が可能です。
嚢胞 (Cyst):
所見: 薄い壁に囲まれた、内部が無エコーの液体貯留性病変です。後方エコー増強を伴うことが特徴的です。肝臓、腎臓、膵臓、卵巣、前立腺など様々な臓器に発生します。単純な嚢胞は一般的に良性ですが、腫瘍性病変が嚢胞変性を起こすこともあります。

異物:消化管内異物、結石などの識別と位置特定

超音波検査は、消化管内や尿路系の異物や結石の検出に非常に優れています。

消化管内異物:
所見: 消化管内に高エコー性の構造として描出され、多くの場合、異物の形状や材質に応じて特徴的な音響陰影や多重反射、彗星尾アーチファクトを伴います。消化管閉塞の原因となっている場合は、異物の口側で腸管が著しく拡張し、蠕動運動が亢進していることが観察されます。異物が線状の場合(紐や糸など)、腸管がアコーディオン状に折り畳まれたり、腸管壁が裂けたりする兆候が見られることもあります。
結石(胆石、尿路結石、腎結石など):
所見: 臓器内や管腔内に見られる、強い音響陰影を伴う明確な高エコー性の構造として描出されます。重力依存性に移動することが特徴的です(特に胆嚢内や膀胱内)。結石の数、大きさ、位置、そして閉塞の有無(尿管結石の場合の水腎症など)を評価します。

血管系異常:シャント、血栓、動静脈奇形の評価

ドプラ超音波は、血流の方向、速度、特性を評価することで、血管系の異常診断に貢献します。

門脈体循環シャント (PSS):
所見: 上述の通り、異常なシャント血管の同定が可能です。カラードプラやパルスドプラを用いて、シャント血管内の血流方向や速度異常を評価します。肝臓内シャントや肝外シャントの区別、複数のシャント血管の有無なども診断します。
血栓症 (Thrombosis):
所見: 血管内に高エコー性の構造物として描出され、血流の閉塞や低下を引き起こします。ドプラモードで、血栓による血流の欠損や乱流を評価します。
動静脈奇形 (Arteriovenous Malformation; AVM):
所見: 動脈と静脈が直接つながり、毛細血管網を介さない異常な短絡路を形成する病態です。カラードプラで、高速度の乱流血流が検出される特徴的な所見を示します。

超音波検査は、これらの多岐にわたる病態をリアルタイムで視覚化し、臨床症状と組み合わせて総合的な診断を行う上で、極めて重要な情報源となります。しかし、超音波だけでは限界があり、病理組織学的検査や他の画像診断モダリティとの連携が、より正確な診断へと導きます。

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